「フィルムカメラの素敵さは‘あの日’の風が香る色」:Ryu Itsuki
アンティークなものが持つ独特の美しさ。
現代のものでもいずれは過去のものになるのに
何故 アンティークなものは不思議な輝きをもっているのでしょう、、?
古河邸などの古い洋館、セピア色の写真、CDではなくレコードの音の温かみ。
アナログの古時計や マニュアルにこだわったスポーツカー等、、。
多分 そこには そこに在った時代の色、空気感が閉じ込められているから、、
そんな気がします。
現代とは微妙にずれた時間軸のスキマ(透き間)。
今回 僕が作った
「かわいいカメラに首ったけ!」(えい出版社 ¥1500+税)
という本に登場する日本のコンパクトフィルムカメラのほとんどは1960年代前後に
初期型が登場しています。
戦後的なムードがやっと終わり、将来への希望を胸に頑張った人々の想い。
これらのカメラには その気持ちが透けてみえるのです。
本の中で キャノンダイヤル35、オリンパスペン、宇宙へ行ったミノルタハイマティック、オートハーフ(これは設計者ご自身の手記です)、ドイツのロボット(これは戦前からあった!こんなものを戦前に作ったのはさすがドイツです)については 短いですが 開発秘話 または歴史を紹介しています。
それぞれのカメラが生まれた背景を知るとき
僕はなぜか 手塚 治虫氏の「鉄腕アトム」誕生のストーリーを思い出しました。
いろいろな事情、愛情、縁、時代、想いが生み出した生命。機械でも、命。
同様に カメラにはみんな個性がある、と僕は感じています。
特にフィルムカメラの場合は機種だけでなく、個々にさえ。
今回の僕の本に かつてマガジンハウスで同僚だったBRUTUS副編集長鈴木氏が
ライカ工場で撮影した写真を載せていますが ライカの工場に手作業が残っているのを見て、
同じ機種でも ちょっとづつ個性的なのは 多分日本でもあの頃は 扱った技術屋さんやラインなどの味がまだ残る余白があったのかな〜と思ったりしました。
また 同じカメラの本を作るのでも
フィルムカメラの場合は エレクトロニクスの塊、というよりメカの塊。
だから ハウツー本を作り易いデジタルに対して
カメラそのものについて 内部のメカニカル中心に本を作れる。
このメカから 今を残す写真というスゴイものができるんだ!という純粋な喜びや驚き、ミラクルな気持ち、、。
そしてメカニカル=技術的であるとは 透徹した一人の人の設計哲学に貫かれた、
‘どんな写真を撮って欲しいか、設計者自らが、自分なら撮りたいか、’という考えの塊だということ。
だからドラマティックで熱くて面白い。
一人の人間のスタートの想いを どう周りが受け止めサポートしたか。
また発売する会社オーナーの、写真やカメラへの姿勢や情熱も垣間見えます。
それぞれの機種の持つ ある種の人間くささはこんなところからかもしだされているんだな〜と僕自身取材しながら感じたり、、。
そういった部分をより深くわかっていただくため 各社、また個々のプロジェクトチームが生み出した哲学の結晶ともいえるカメラ内部を公開したりもしています。
そして機械なので 自分でも設計や構造、特徴を良く知り、熟練すれば直せる!
現代に合わない所は工夫次第、知恵を絞ったり、仲間内で情報交換をしたりして現在のパーツで組み立てたり、
もうどうしてあげることもできないボディから、パーツをとってまた他のボディで生き返らせてあげることもできる、そんな紹介もしてみました。
分解、改造、工夫、、そういう作業をしていると やはりカメラは命在る「相棒」なんだな〜とつくづく、、。「こいつを死なせちゃいかん!」と思いますもん。。
撮影に関していうなら
マニュアル、アナログは めんどくさいです、確かに。
でもめんどくさいから 遊べるともいえます。
考える、という人間の極上の楽しみを満喫できる。スローな楽しい時間をすごせるのですから。
KONICAC-35での撮影:サイパン
そしてやはりプロとしていうなら重要な点として
あがった写真のトーンや色が まだデジタルはフィルムにおいついていません。
ただ 印刷すると今は同じ感じに仕上がりますが。
オリジナルプリントで勝負するときは やはりフィルムが上。
また モノクロのように 自分の味を深く出したければ これはフィルム優勢でしょう。
ただこのへんは デジタルカメラも各社頑張っているので
時間の問題かもしれません。
それでもなおフィルムに心が残るのは、、。
やはりそれぞれの時代の空気を残す
レンズの映し出す色とトーン。
撮りたい写真のムードによってレンズを選べる。
いろいろな時代のレンズから、、(あ〜 幸福、、)。
そして 「現代的」とはひとあじ違った美しいボディ。
今回の本ではそれぞれの機種にキャッチコピーを短くつけました。
例えば アメリカの生んだ「ボルシージュベリー」
ジュベリー、とは「よろこび」を意味します。
ですから「ボルシーの喜びは古き良き米国の香り」としました。
モンローとヨハンソンが似ているといっても
やはりそれぞれの生きる時代の香りが個々にやどっていて
それぞれに素敵で、でも やっぱり味わいが違います。
このカメラ、今 モンローがかわいいおばあさんになっていたら、、
これで撮りたいような一台です。
どんなカメラかは、、ぜひ書店で手にとって 中にある機種イメージ写真に写るエレガントなボディを見てやってください。
本には全20機種載せました。
それぞれの個性を知っていただき 自分の相棒をみつけて
一度しかない「今」
を撮っていただけたら著者としては最高に幸せです。。
そのとき「あの写真撮ったとき僕は アイツ(カメラね、、たとえばヤシカハーフ17で、やんちゃなこのカメラではこんな苦労もしたな〜と一緒に思い出せるとかあるとまた楽しいですね!)と撮影散歩中だったなあ〜」と思い出せるような一台をみつけていただけたら、と願っています!。
多分、本の中で僕が記した撮影ストーリーも
こういうカメラ達がいたからこそ覚えていられたのだと思いますから。